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神吉拓郎『明日という日』(文藝春秋)

 名前はよく知つてゐるが、読むのは今回が初めての作者。

神吉拓郎「明日という日」

 特にきつかけがあつたわけではない。

 短編を読む時には、いつも意識のどこかに「苦手」の二文字が潜んでゐるものだが、この短編集はその苦手意識を封じ込めたまま最後のページにまでたどり着いた。

 17編の短編を収める。良かつたのは「鍵」(蜘蛛膜下出血で倒れて意識不明が続いてゐる同僚の職場の机の抽斗の奥にテープで留めてあつた鍵をめぐる話)「めがね」(所謂オフィス・ラブの相手である女性社員が結婚することになるが、彼女に贈つた眼鏡の「秘密」が結婚式の場で明かされる話)「ボランティア」(単身赴任先で雇つた《家政婦》の謎めいた身の上)、それから内容には触れないが「剃刀の刃」と「セメントの花」も佳品。
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永井路子『炎環』(文春文庫)

 この本は歴史の勉強のつもりで読み始めた。短編集だとは思はなかつたが、ちよつと変はつた趣向の短編集だ。

 四編から構成されてゐて、「悪禅師」は源頼朝の異母弟である全成(ぜんじょう)、「黒雪賦」は梶原景時、「いもうと」は北条政子の妹で全成の妻である保子、「覇樹」はその父である北条時政、を中心に据ゑて同じ出来事をそれぞれの視点から捉へてゐる。

 作者の「あとがき」にはこんなふうに記されてゐる。

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 この四編は、それぞれ長編の一章でもなく、独立した短編でもありません。一台の馬車につけられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引っ張ろうとするように、一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆく——そうした歴史というものを描くための一つの試みとして、こんな形をとってみました。(302)
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 歴史小説を読む度に、作者の取材力や史料の読み取り方に感心させられる。同時に、自分は呆れるくらゐものを知らないなあと溜息も出る。

 「乳母」の役割が大きかつたことを久しぶりに思ひ出した。

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 当時の乳母というのは後世のそれとは大分性格が違う。乳母となったものは、その夫ともども一家を挙げて、その子が成人するまでの養育のすべてを負担するのである。たとえば、頼朝の乳母になったのは、比企掃部允(かもんのじょう)の妻の比企の尼や、首藤(すどう)経俊の母、小山政光の妻、三善康信の母の姉などだが、中でも比企尼は、彼が伊豆に配流されていた二十年間、つねに生活の糧を送って何くれとなく世話をした。またその謫居を慰め、挙兵の当初から頼朝を助けて働いた安達盛長、河越重頼、比企能員(よしかず)らはこの比企尼の娘婿である。(50)
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 また、歴史小説も読みたくなつてきた。

山本麻子『ことばを鍛えるイギリスの学校』(岩波書店)(3)

イギリスの教育では「話すことと聞くこと」も重視されてゐるのだが、なぜさうなつたのか理由があつたやうだ。

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エドワーズという教育学者の著書によると、英国の「話すことによって学ぶ」という考えのもとには、ピアジェやヴィゴツキー、ブルーナーなどの教育心理学者の主張が影響を与えているという。つまり、「学習」という行動は社会と深く関わっているということ、その中でも「話すことと聞くこと」が中心的な役割を担っているということだ。こうした見解によると、教師の役目というのは、子どもが学習するための、いわば足場を作ってやることのようである。(65)
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 もう一つ、イギリスで保護者と学校のかかはりが重く見られてゐるのにも随分昔の報告が活きてらしいことは初めて知つた。

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一九六七年の報告では、親の教育に対する「態度」という要因のほうが、親自身の学歴や職業、家庭での物質的な状況、子どもの通う学校の良し悪しよりも影響が大きいと結論づけた。その結果、親の参加を促し、学校とコミュニティとの連携が推奨されるようになった。今のイギリスの学校で親が学校に大きく関わっているのは、この報告書に端を発しているようである。(25)
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 イギリスの教育についても少し調べたくなつてくる。

(完)

山本麻子『ことばを鍛えるイギリスの学校』(岩波書店)(2)

 イギリスの教育では「読む」だけでなく、「書く」ことにも力が注がれてゐる。

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中等教育課程段階の生徒たちは、(中略)広範で多様な書き物をすることになっている。例を挙げると次のようなものだ。「物語、詩、劇の脚本、自叙伝、映画のシナリオ、日記、議事録、パンフレット、計画書、小冊子、広告、論説、新聞記事、意見を含んだ手紙、批評、評論、小論文」など。(133)
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 「物語、詩、劇の脚本などはだれもが必ずいくつかは書くようだ」(133)といふ。

 取引先の30代のイギリス人に聞いたところ、ほぼ同じやうな教育を受けてゐた。

(つづく)

山本麻子『ことばを鍛えるイギリスの学校』(岩波書店)(1)

 今はどうか知らないが、私の学生時代は、同じ「帰国子女」でもイギリス帰りの学生とアメリカ帰りの学生とでは歴然とした違ひがあつた。

 おほよその傾向であるが、アメリカ帰りは恐ろしく知識が欠如してゐるのに、口だけは達者で、イギリス帰りのはうはよく本を読んでゐるといふ印象が強かつた。

 本書を読んでゐると、当時の帰国生の姿が時々脳裡に浮かんでくる。

 「中等教育課程は11〜14歳までのキーステージ3と呼ばれる学習段階と、その後16歳までのキーステージ4という学習段階に分かれる」のだが、どのやうな文学作品が対象になるのかといふと、以下の通り。

///////////////
 ・現代の作家のものも含め、異なった時代を背景として作られた物語や詩や戯曲。
 ・長きにわたる伝統をもつ英文学の重要性を把握できるような作品。(中略)この中にはジェーン・オースティン、シャーロット・ブロンテ、チョーサー、チャールズ・ディケンズ、コナン・ドイル、トマス・ハーディ、キーツ、ジョナサン・スウィフト、オスカー・ワイルドが含まれている。(106)
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 シェイクスピアのドラマについては「キーステージ3の段階で少なくとも一つ扱う}(106)ことになつてゐるといふ。確かに私の知つてゐるイギリスからの帰国生たちは文学作品を良く読んでゐた。

(つづく) 

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