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「歴史的假名遣ひ」を守る理由(5)





  昭和何年までかは覺えてゐないが、岩波文庫の解説目録には鈴木信太郎・譯『ヴァレリー詩集』などに「正字・正かな」といふ表示がわざわざ附されてゐた。鈴木信太郎も断固として漢字・假名遣ひの改惡を認めなかつたので、現在に至るまで、岩波では鈴木譯の『惡の華』『マラルメ詩集』『ヴィヨン全詩集』などに改惡の魔手を伸ばすことはできずにゐる。




  内田百も新字新かなは認めなかつたから、旺文社文庫の百シリーズは正字・正かなを守つてゐた。にも関はらず、弟子面をして勝手に中村武志が認めたために、今やなしくづしに百の作品は作者の忌み嫌つてゐた醜悪な表記にされてしまつてゐる。




 ところで、正字・正かなを使ふやうになつた最大のメリットは、古い文献がまつたく抵抗なく讀めるやうになつたことだらうか。それまでは、本を開いて「醫學」「晝間」「編輯」「舊」「辯護」「缺點」などといふ字が見えただけで、「あ、これはだめだ」と戦意喪失、殆ど拒絶反応をおこしてゐたのに、それがふつうに讀めるのは大きな變化で、一氣に過去のすぐれた業績を自分の世界に取り込んで活用できるようになつたのである。日本の古典への距離も縮まつた。




 殆どの作家の全輯は正字・正かなで、本人が諒解した表記を採用してゐるが、新字・新かなにされた作品は、単に字體のみならず、適当に漢字を平假名にされるなどさまざまな改竄を施されてゐることがふつうである。やはり本人が使つたとほりの、認めたとほりの文字遣ひで文章は讀みたい。私ごときでさへ、おなじ文章の中で「固まり」と「塊」を使ふことがあるのだから、「同じ意味だから」と無茶な統一をされてはかなはない。(完)



 




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