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06
   

荒川洋治 全詩集 を読む

  あの恥づかしさうに、はにかみながら木訥に話す荒川洋治さんが、本職の「詩」によつて表現を始めると、厳しいほどの批評眼を対象に向ける。冷徹な批判精神を凝縮した言葉にのせて表現する。

 『坑夫トッチルは電気をつけた』に収められてゐる宮澤賢治批判の有名な詩が「美代子、石を投げなさい」だ。

  宮沢賢治論が
  ばかに多い 腐るほど多い
  研究には都合がいい それだけのことだ

と一刀両断に切り捨ててゐるが、底の浅い放言ではない。

  岩手をあきらめ
  東京の杉並あたりにでていたら
  街をあるけば
  へんなおじさんとして石の一つも投げられたであろうことが

どきりとさせられる。でもこれは根拠のある想像の世界だ。

  ぼくなら投げる そこらあたりをカムパネルラかなにか知らないが
  へんなことをいってうろついていたら

そして、「あたらしいぞ、わたしは」の詩人は宮沢賢治にも呼びかける。 

  宮沢賢治よ
  知っているか
  石ひとつなげられない
  偽善の牙の人々が
  きみのことを
  書いている
  読んでいる

 
事実をしつかりと見つめ、その現象の背後にある真相を見極め、しかも自身の立場も鮮明にしてゐる。たのもしいぞ、荒川洋治は。

 荒川さんは手厳しい、苛烈なまでの批判の言葉を発してゐる時でも、どこかしら心の余裕を窺はせる柔らかさが文章から滲み出てゐる。しかし、それと同時に、「ことば」に強烈な力がある。ことばのもつ潜在力を限界まで引き出さうとして、ひとつひとつのことばと苦闘した挙げ句の成果を並べてゐるから、そこに柔らかさと力強さが同居してゐるのだらう。
 「詩の朗読」などにうつつを抜かしてゐる似而非詩人には望むべくもない音の精妙な世界もそこには併存してゐる。

 荒川さんといへば、私は「宮澤賢治批判」「朗読の全面否定」とともに「反ボランティア」を思ひ浮かべる。

 ボランティア批判の詩「VのK点」は『渡世』に入つてゐる。

 

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