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08
   

荒川洋治『黙読の山』(みすず書房)

  最近時々、荒川洋治さんの未読のエッセイを引つ張り出して来ては、ぽつりぽつりと読んでゐる。

 荒川さんが思ひ出の映畫として、ゴンチャロフの『オブローモフ』を原作とする『オブローモフの生涯より』を取り上げてゐる。

 エッセイの一節にこんな言葉がならんでゐる。

 「小作人たちは、なんでも主人のいうとおり。自分というものをもつことはない。こんな情景を見せられると、反発する人もいるかもしれないが、封建的社会も、回想のなかではおとぎばなしのように、やわらかい日差しのなかにある。
 自分の意志をもって生きる、近代人の世界はここにはない。それとまったく反対の人生を生きる人の姿だ。アレクセーエフもまた、そのひとりである。でも彼らが時折浮かべる穏やかで、すなおな表情は、ぼくをつよくゆさぶる。そして、こんなことを思う。
 自分というものをもって生きようとすることは、ある意味でむなしいこと、もしかしたら徒労なのではないか。自分というものをもって生きることよりも、それをもたないで、生きることのほうに、しあわせがあるのではないかと。アレクセーエフは、オブローモフのそばにいる。オブローモフがどこかに行くと、ひょこひょこついてくる。二人はとても楽しそうだ。そこには、古い社会を通り越した人には見えないものがある。」

 考へさせられる一節だ。
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