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中谷宇吉郎『科学以前の心』

 中谷宇吉郎のエッセイ「実験室の記憶」が読みたくて、それが収録されてゐる「ちくま文学の森」シリーズの一冊で絶版になつてゐる『機械のある世界』を入手したら、すぐに『科学以前の心』(河出文庫)が出版され、そこにも「実験室の記憶」が入つてゐた。


科学以前の心 (河出文庫)科学以前の心 (河出文庫)
(2013/04/05)
中谷 宇吉郎

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 「実験室の記憶」といふのは、「実験室」といふ「部屋」には実験の成果などが蓄積されてゐて、まるで記憶力をもつてゐるとしか思へないやうなことが起こるといふ意味である。実験室にまつはる作者の思ひ出といふ意味ではない。

 建物や部屋に「心」があるといふのはわかる氣がする。歴史から生まれる伝統の力のやうなものかもしれない。

 中谷宇吉郎は、やはり寺田寅彦の「文学を解する心」から影響を受けてかういふエッセイを書くやうになつたのだらう。

 だからといふわけでもないが、読んでゐて、こちらもつい寺田寅彦と比較してしまひ、今さらながら寺田寅彦のエッセイの文章も内容も「古さ」を感じさせることがまつたくないことに驚かされる。

 寺田寅彦のエッセイは古さを感じさせるどころか、むしろ新しさが光つてゐることが多い。それは一つには扱ふ題材が人間の普遍的な感情・心情に触れるものが多く、それをさらに時代特有の空氣から切り離して、一層普遍性を与へてゐるからであり、また科学者らしい客観的な観察と描写に徹してゐて、自分のことを語つてゐても、変に軟弱な主観的感情を表に出さず抑へてゐるからなのだらう。

 対照的に、中谷宇吉郎はあまりに正直すぎて、時代に染まつた自己の感情なり感想なりをストレートに文章にしてしまつてゐる部分にとりわけ「古さ」が出てしまつてゐる。

 今度は久しぶりに寺田寅彦が読みたくなつてきた。


寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)
(1963/01)
寺田 寅彦

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