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松本清張『黒の様式』(新潮文庫)

 松本清張の作品には初めて読んだ時も大して期待してゐた訳ではないが、「この程度なのか」といふのが第一印象だつた。失望ではなく、驚きだつた。

 その後も、その第一印象は払拭されるどころか、繰り返されるだけである。

 松本清張は本人の作品よりも、それを原作とする映畫の方が面白い。

 今はもう積極的に読まうといふ氣は無くなつたのだが、R. S.Booksの棚に並んでゐると氣になつてしまふ。

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 『黒の様式』は中編小説集で「歯止め」「犯罪広告」「微笑みの儀式」の三作が収められてゐる。

 物語の中身には触れないが、ちよつと引つかかる《言葉》に時々ぶつかる。

 「電話で自動車屋を起こして呼ぶ」(45)といふが「自動車屋」が私にはよく理解できない。前後を読んでも、ここに唐突に出てくるだけで、自動車屋自身はどこにも登場しない。

 「行政解剖」といふ言葉が何度か出てくるが、私には馴染みのない言葉で「司法解剖」との違ひもわからず、調べてみて、初めてわかつた。

 松本清張が推理小説を単なる《謎解き》の物語から解放しようと工夫を重ねてゐたらしいこともわかつた。その點では「歯止め」の余韻を残した物語の展開には《新しさ》を感ずる。

 松本清張の作品を読むのはこれで5作目になるが、中身よりも《題名》に感心する。昨今の小説家の作品名と比べるとその差は歴然だ。

 『Dの複合』にしろ『ゼロの焦点』にせよ「おや、なんだらう」と思はせるタイトルだ。『点と線』などは作品名を超えて、ふつうの言葉として使はれてゐる。

 最近の作家も題名に少しは氣を遣つて工夫して欲しいものだと思ふ。
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